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東京地方裁判所 昭和55年(タ)250号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【説明】

請求原因は次のとおり。

1 原告(昭和三〇年六月二八日生)は、日本国民であるが、昭和四六年一一月英国に留学し、ロンドンにおいて被告(昭和一九年四月一日生)(国籍、英国<編注・「グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国」>)と知り合つて、その後交際を続け、昭和四七年一一月に原告が帰国すると、翌一二月被告も原告の跡を追つて来日し、右両名は、前記被告の日本における最後の住所<編注・東京都世田谷区内>で、同棲するようになり、昭和四九年七月二七日には、東京都世田谷区長に対し、婚姻の届出をなして夫婦となつた。

2 ところが、被告は、風俗習慣や気候の相異のため、日本での生活に慣れることができなかつたためか、昭和四九年一二月二三日、前記住所地に原告を残して立ち去り、行方不明となつた。その後、原告は、ロンドン在住の被告の母親に手紙で問い合わせ、さらに、昭和五〇年一〇月ころには自らロンドンに赴いて捜したが、被告の行方は杳として知れない。昭和四九年一二月二三日以降、被告から、生活費の送金はもとより音信もなく、その生死すら不明である。

3 右の事実は、民法七七〇条一項二号、三号及び五号にそれぞれ該当するから、原告は、被告に対し、原告との離婚を求める。

なお、「被告は、公示送達による呼出しを受けたが、本件口頭弁論期日に出頭しないし、答弁書その他の準備書面を提出しない。」。

【判旨】

一<証拠>によれば、請求原因1、2の事実の外、次の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。

1 被告の先祖は、代々イングランドに在住していたが、被告の両親は、第二次世界大戦中スコットランドに疎開し、被告は疎開先で出生した。

2 被告は、大学卒業後、イングランドのロンドンに移つて仕事に就き、被告の両親も、イングランドのニューカスに居住するに至つている。

3 被告は、昭和四七年一二月初めて来日し、原告と同居していた間、語学学校で英語の教師を一時していたことがある。

二本件離婚の準拠法は、法例一六条により、夫たる被告の本国法、すなわち、英国法によるべきところ、同国は地方により法律を異にする国であり、前記認定の事実によれば、被告はイングランドに属するものというべきであるから、法例二七条三項により、イングランドの法律が適用されることになる。ところが、前記認定の通り、本件は、妻たる原告が夫たる被告によつて遺棄された場合であるところ、イングランド法によれば夫によつて遺棄された妻は、夫がドミサイル(Domicil)を有しない地の裁判所に離婚訴訟を提起することも許され(MATRIMONIAL CAUSES ACT 1965,S40)、かかる場合にも法廷地法に準拠すべきものと定めているものと解されるから、法例二九条の趣旨に従い、結局日本法が適用されることになる。

そして、前記認定の原被告間の婚姻関係は、日本民法七七〇条一項二号、三号及び五号に各該当するものというべきである。

三よつて、原告の本訴離婚請求は理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(牧山市治 押切瞳 池田光宏)

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